日本財団 図書館


 

3.2 模型試験

載荷状態の違いが性能に及ぼす影響を詳細に調査するため、A船とB船について、模型試験を実施した。
模型試験に係わる各載荷状態の喫水を図3.2。日こ示す。本図は、喫水の違いを見やすくするため、長さ方向と深さ方向の縮率を変えてある。図中のFull LoadとTrial Conditionは、前節で記述された実船試験の状態に対応する載荷状態である。A船、B船おのおのについて5種の載荷状態に関して模型試験を実施したが、各々、トリム無しの喫水変化シリーズ、喫水ないし排水量を等しくした場合のトリムシリーズとなっている。
模型試験は、4.5m模型船、2.5m模型船を使用して拘束模型試験、自由航走模型試験を実施したが、図3.2.2〜4に4.5m模型船を使用した拘束模型試験結果を示す。
図3.2.2は付加質量係数、干渉係数の2d/Lpp(dは平均喫水)による変化の様子である。mX/mYm/mは船の長さ方向、幅方向の付加質量の船の質量に対する比である。kZIは、付加慣性モーメントを環動半径に換算した値である。1−tR、aH、XHはおのおの、船の長さ方向、横方向の力、旋回モーメントに関する舵力の船体との干渉係数である。図中の○印はA船、 印はB船を示す。○、 はトリム無しの載荷状態、◎等のその他はトリム付の載荷状態である。実線、破線は、おのおのA船、B船のトリム無しの状態のデータを直線で近似した線である。点線はそれらを軽喫水の方向に外挿した線である。
船の横方向の付加質量係数mY/m、舵による横力の干渉係数aHの場合に、喫水の影響が大きい。その他のパラメータについては、喫水の影響が認められるが、その程度が小さいので、船の性能に及ぼす影響は小さい。
図3.2.3は舵に流入する流れの横方向成分vR(Uは船の合速度)が船の横流れ速度vによってどのように変化しているかを示した図である。B船の場合は、全体として右下がりの傾向となっており、載荷状態による違いも小さい。A船の場合は、載荷状態による違いが比較的大きいと共に、軽い載荷状態においてはv/U>OでvR/U>Oとなっている部分もある。これは、舵に入ってくる流れの向きが船の斜航方向とは逆になっている事を示している。本図をみると、舵に流入する流れは、船によってあるいは載荷状態によってかなり異なっていることが分かる。
図3.2.4に船体流体力微係数の喫水、トリムによる変化の様子を示す。横軸、○印、 印等の意味は、図3.2.2の場合と同じである。左半分は船の横方向の運動方程式の係数(Yv’等)、右半分は旋回の運動方程式の係数(Nv’等)である。本研究では、非線形項の組合せの違いについても研究したが、本図は貴島の推定式に使用されている組合せで示してある。
横方向の運動の係数についてみると、線形項Yv’、Yr’の喫水、トリムによる変化が大きい。Yv’は喫水が浅くなるに従い0に近い値となる。Yr’の場合は、トリムの影響が大きい。
非線形項のなかでは、Yw’の喫水、トリムによる変化が比較的大きい。他の非線形項については、喫水、トリムの影響が小さい。
旋回の運動方程式の係数をみると、線形項のうちNv’の喫水、トリムによる変化が大きい。ついで、線形項のうちNr’、非線形項のうちYvv’の喫水、トリムによる変化が大きい。他の非線型項の係数は、喫水、トリムの影響が小さい。
図3.2.5は上記の拘束模型試験と同じ模型船を使用して実施した自由航走模型試験結果である。横軸は舵角δ、縦軸は旋回角速度の無次元値r’である。自由航走模型試験においては模型船自重が大きかったので浅い喫水の載荷状態の試験は実施できなかったが、喫水が深くなるに従い不安定ループの幅が大きくなる傾向が認められる。大舵角のときのr’は、載荷状態による違いが小さい。

3.3 推定計算結果の比較

本節では、前節に示した拘束模型試験結果を使用して、A船、B船の各載荷状態の操縦性能を推定した結果を比較する。シミュレーション計算の方法は、MMGモデルに準拠している。
図3.3.1は35°旋回試験のシミュレーション結果である。A船の2.68%Trimの載荷状態のTactical Dia.と旋回半径

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION